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中原中也

中原中也の手紙 選

 

子供の時に、深く感じていたもの、──── それを現そうとして、あまりに散文的になるのを悲しんでいたものが、今日、歌となって実現する。 _

 

 

蝉の音のほか、何にも聞こえません、寝ころんでいますと、何だかいたずらにかなしくなってきます 飛行機にでも乗って飛び出したい気持と、このままじっとしていたい気持と、両々相まって湧いてきます。 _

 

 

今僕はむしょうに悲しいので、この手紙を書くまでだ。 _

 

 

赤ん坊は、だんだん物覚えしているようです。次第に可愛くなりますが、愛というよりもっと憐情といった風のものらしく淋しい気がします。─── それで尚更可愛いくなります。 _

 

 

自分自身でおありなさい。弱気のために喋ったり動いたりすることを断じておやめなさい。断じてやめようと願いなさい。そしてほんの一時間でもつづけてご覧なさい。すればそのうちきっと何か自分のアプリオリというか何かが動きだして、歌うことが出来ます。 _

 

 

散文氾濫の世の中に、たまには小鳥の歌もある方がよろしゅうございましょう。 _

 

 

月光はいいものです。月光よりいいものはありません。もはや一生、そういう気持ちから出ることはないでしょう。 _